ペットと暮らす獣医師からのアドバイス(68)
猫を病院に連れて行くには
毎週金曜日に産経新聞の生活面に掲載される、Team HOPE獣医師のリレーコラム、第68回目が掲載されました。
Team HOPE関東地区、日本動物医療センター 本間梨絵 がお伝えします。
大切な家族の一員である猫が病院で恐怖におびえて固まったり、お漏らしをしたり、奇声を発したり。そんな経験で病院から足が遠のいてしまうのは、自然なことだと思います。
しかし、動物には、大好きな家族から見放されてしまわないよう、体の不調を隠してしまう習性もあります。気づいたときには手遅れにならないよう、定期的な健康チェックが重要です。
病院側も恐怖心を起こさせないよう音や匂い、視覚に配慮し、短時間で診察できるように工夫していますが、第一関門は猫をいかに穏やかに病院へ誘導するかです。来院に伴うストレスを解消できるポイントをお伝えしましょう。
猫の祖先は縄張り意識が強く、非常に狭い範囲で単独で生活していたため、縄張りの外では臨戦態勢を取る習性が残っています。
そうならないよう、移動には、慣れた匂いがついたキャリーバッグを使うのがお勧めです。家にキャリー(上半分が簡単に取り外せるものが理想)を常に置き、自由に出入りできるようにしておきます。猫が自らのペースで入ったときにそっと扉を閉めます。猫がいつも使っているブランケットを中に入れておくといいでしょう。
猫は慣れたものに触れられている面積が広いほど安心します。暑い日は注意が必要ですが、タオルなどをなるべく隙間ができないよう入れてあげたり、顔を隠してあげたりすることも効果的です。
視覚的な恐怖を和らげるためキャリーにはカバーをかけ、使用する分前に、猫を安心させる合成猫フェイシャルフェロモン製剤をキャリーにスプレーしておいてもいいかもしれません。
移動の際はなるべくいつもの優しい声で話しかけ、車の場合はしっかりとシートに水平に固定し、穏やかな運転を心がけましょう。
(産経新聞 平成30年1月19日付)