ペットと暮らす獣医師からのアドバイス(90)
室内に潜む危険
毎週金曜日に産経新聞の生活面に掲載される、Team HOPE獣医師のリレーコラム、第90回目が掲載されました。
Team HOPE東北地区委員、エスティー動物病院院長 佐藤龍也 がお伝えします。
近年、ペット飼育が可能なマンションが増えてきたこともあり、室内で飼育される犬や猫が増えました。ただ、一見安全と思われる室内にもペットにとって危険なものがあり、中でも異物誤飲はよく起こる事故の一つです。人の幼児と同じように、好奇心から口にしてのみ込んでしまうことも多いのです。自然に排泄されることもありますが、大きさや物によっては開腹手術を要する場合もあります。発見が遅れると命を落とすことも少なくありません。
犬の誤飲は食欲や好奇心の旺盛な幼犬でよく見受けられます。特に、タマネギやチョコレート、キシリトールガム、レーズンなど食べてはいけないものや人間の常備薬などは中毒症状などを引き起こすので非常に危険です。
最近は、紙巻きたばこを加熱式のものに替える喫煙者が増え、犬がそのカートリッジを誤飲する事例が多くなっています。万が一、誤飲した際は、できるだけ早く動物病院を受診してください。
また、緊急時に家庭でできる吐かせる処置として、食塩やオキシドールを使った方法をインターネットのサイトなどでよく見かけますが、それぞれ中毒症状の誘発や胃の粘膜を荒らしてしまう危険性があるので、まずは動物病院の受診を最優先してください。
近年の猫ブームによる飼育頭数の増加に伴い、猫の誤飲例も増えています。興味を引くおもちゃやアクセサリー、特にひもやビニール、ウレタン生地のフロアマットは、腸閉塞穿孔を起こし開腹手術になるケースも多いです。遊びながらかみちぎってのみ込んでしまうので、普段の行動をよく観察してください。
ペットの周りに誤飲する恐れのあるものを置かないようにすることが、最善の事故予防策といえるでしょう。
(産経新聞 平成30年6月29日付)