ペットと暮らす獣医師からのアドバイス(8)
さまざまな刺激に慣れさせる
毎週金曜日に産経新聞の生活面に掲載される、Team HOPE獣医師のリレーコラム、第8回目が掲載されました。
Team HOPE関東地区委員長、王禅寺ペットクリニック代表 川瀬英嗣がお伝えします。
人と一緒に暮らすペットは、人の声やテレビの音など、多くの刺激に囲まれることになります。初めて散歩に出たとき、一歩も動けずにブルブル震えている子犬も多いと思いますが、それも当然。外の世界を知らなかった子犬からすると、見知らぬ巨人の世界に来たようなものなのですから。
ペットが人の暮らす環境に慣れるには時間がかかります。日常のさまざまな刺激が、ペットにとって害のないものだと理解できるまで、根気よく付き合いましょう。
例えば、散歩中に動けなくなったら、動くまで一緒にいたり、人の声やテレビの音を聞かせながら遊んだりしてください。ペットが「刺激は悪いもの」という先入観を持たないようにするためです。
玄関のチャイムが鳴るたびに「ワンワン!」と飛び出していく犬も多いと思います。元気なのはいいことですが、縄張り意識が強すぎて、家全体が自分のものと勘違いしていることがあります。そうした場合は対応が必要です。
子犬のうちは、飼い主が相手をできるときにだけケージから出し、部屋に放しっぱなしにするのはやめましょう。自分の縄張りをきちんと教えることで、人の家の中で共存していることを理解させるためです。また、ケージの中で「待つ」という習慣ができていると、災害時の避難先でも安心という利点もあります。
また、普段あまり行く機会のない病院は、ペットにとって怖い存在かもしれません。入った途端に震えが止まらなくなったり、前脚を踏ん張って動かなくなったりするペットも多いです。いざという時に困ることも考えられますので、散歩の途中などで気軽に立ち寄ってもらえれば、うれしいと思っています。
(産経新聞 平成28年10月21日付)