ペットと暮らす獣医師からのアドバイス(78)
狂犬病予防接種の徹底を
毎週金曜日に産経新聞の生活面に掲載される、Team HOPE獣医師のリレーコラム、第78回目が掲載されました。
Team HOPE中部地区、いるか動物病院院長 近藤隆太 がお伝えします。
狂犬病は、人を含むすべての哺乳類が感染する病気です。治療法はなく、発症するとけいれんや呼吸困難、まひなどの神経症状を示し、ほぼ100%死ぬ危険なものです。狂犬病を発症している動物にかまれたり、傷口をなめられたりするだけでも感染する可能性があります。
戦前の日本では多くの感染例がありましたが、昭和25年に感染を防ぐワクチンの接種を義務づける狂犬病予防法が制定され、厚生労働省の資料によると動物では32年の発生以降の感染例はありません。
しかし、世界では推計で毎年5万人以上が、また数多くの動物が発症しているといわれています。「日本は島国だから、狂犬病は発生しない」と思われがちですが、50年以上発生していなかった台湾では、平成25年に野生動物の間での流行が確認されました。
日本との交流が盛んな東南アジアなどでも、人への感染例が多数報告されています。狂犬病の国内侵入を完全に防ぐことは難しい状況かもしれません。
では、どのように予防すればよいのでしょうか? 予防法に定められているように、犬にワクチン接種を徹底することです。世界保健機関(WHO)のガイドラインによると、万が一、国内に狂犬病が侵入したとしても、7割以上の犬が狂犬病の免疫を持っていれば、ウイルスの蔓延(まんえん)を防止できるといわれています。
近年、日本国内のワクチン接種率の低下により、感染拡大の危険も指摘されています。ご自身とペットを含む家族のため、社会のために毎年狂犬病予防注射をぜひ受けてもらいたいと思います。愛犬が高齢だったり、持病などで健康に不安があったりする場合は、かかりつけの動物病院で健康診断を受けた後に接種することをお勧めします。
(産経新聞 平成30年3月30日付)