ペットと暮らす獣医師からのアドバイス(72)
猫の眠りを考える
毎週金曜日に産経新聞の生活面に掲載される、Team HOPE獣医師のリレーコラム、第72回目が掲載されました。
Team HOPE九州地区、兵庫ペット医療センター東灘病院 宮保憲幸 がお伝えします。
読者の皆さまは「猫」の語源について、ご存じでしょうか。諸説あるようですが、「寝る子」と書いて「ネコ」と呼ぶことに由来するとするくらい、昔から猫はよく睡眠をとることで知られています。今回は、この猫の睡眠についてお話ししたいと思います。
猫の睡眠時間は一般的に1日の3分の2程度といわれています。子猫の場合はさらに多く、時間ほどとなることもあります。この睡眠時間の長さには猫の狩猟本能が大きく影響しています。昼間のうちにたっぷりと睡眠をとり、狩猟のためのエネルギーを蓄えているというわけです。
次に、その睡眠の種類についてですが、実は猫の睡眠も、人間と同じように「レム睡眠」と「ノンレム睡眠」と呼ばれるものに分類されます。前者は眼球活動が活発となる浅い眠り。後者は最も深い眠りとなります。猫たちは、このノンレム睡眠時に自身の細胞を修復し再生しているのです。
一方、レム睡眠の間は眼球だけでなく、手足やヒゲがよく動いているのを観察できるでしょう。もし、誰かが近づいてきたり、物音がしたりしたら、すぐに目を開け、周りの状況を確認してから再び眠りに戻るはずです。猫はこのレム睡眠が人間の約3倍もあるとされています。この間、猫は浅い眠りをとることで、周りの環境の変化に敏感に対応できるのでしょう。
こうした理由から、猫の心地よい睡眠のために、電灯の光の当たり具合の調節や、テレビの音量を小さくするなど配慮してあげることが、猫とともに暮らす私たちの大切な役割の一つとも言えるのではないでしょうか。
(産経新聞 平成30年2月16日付)