ペットと暮らす獣医師からのアドバイス(60)
高齢期の犬に多い病気
毎週金曜日に産経新聞の生活面に掲載される、Team HOPE獣医師のリレーコラム、第60回目が掲載されました。
Team HOPE東北地区、あきたこまつ動物病院院長 小松亮 がお伝えします。
今回は高齢期の犬によく見られる病気についてお話しします。犬も高齢になると病気になりやすくなります。
第一に注意していただきたいのが、心臓の病気、僧帽弁閉鎖不全症です。僧帽弁閉鎖不全症は、心臓内の僧帽弁という扉がうまく閉まらなくなってしまう病気です。初期の状態では目に見える症状はあまりありませんが、進行するとせきがひどくなったり、呼吸が早くなったりして、運動後などに苦しそうにします。さらに進行すると、肺に水がたまってしまう肺水腫を起こし、命の危険も生じます。
次は、内分泌(ホルモン)の病気です。糖尿病、副腎皮質機能亢進(こうしん)症(クッシング症候群)、甲状腺機能低下症などがあります。糖尿病は膵臓(すいぞう)から分泌されるインスリンの作用不足による病気です。多飲多尿の症状が多く、病気が進行すると急に元気や食欲が無くなり、白内障の併発や腎不全などの命に関わる状態になってしまいます。
クッシング症候群は、腎臓近くにある副腎からホルモンが過剰に分泌される病気です。多飲多尿の症状が出たり、病気が進行すると筋力低下で起立困難や肝機能障害や脱毛を起こしたり、糖尿病を併発することもあります。
甲状腺機能低下症については、前回のコラムで説明しました通り、冬に重度の低体温症に陥ると命の危険が生じる病気です。
3つめが、腫瘍。犬にもいろいろな腫瘍の病気があります。触ってしこりを確認しやすいリンパ節や乳腺、皮膚の腫瘍もあれば、胸やおなかの中に発症し、発見が遅れがちな腫瘍もあります。
いずれの病気も早期に発見できれば、小さな負担で治療ができることも多いのです。定期的に健康診断を受けてください。
(産経新聞 平成29年11月17日付)