ペットと暮らす獣医師からのアドバイス(59)
命に関わる冬に多い病気
毎週金曜日に産経新聞の生活面に掲載される、Team HOPE獣医師のリレーコラム、第59回目が掲載されました。
Team HOPE東北地区、あきたこまつ動物病院院長 小松亮 がお伝えします。
冬に注意が必要な病気はたくさんありますが、今回は特に命に関わることもある病気をご説明します。
1つ目は、犬の甲状腺機能低下症です。中高齢の犬に多く見られます。喉の気管の横にある甲状腺という臓器から、甲状腺ホルモンがうまく出なくなる病気です。
甲状腺ホルモンには、体の代謝を上げる作用があります。そのホルモンが不足すると、食べ物を食べても、うまく熱を生産することができず、低体温やむくみ、活動性の低下、皮膚のかさつき、脱毛などの症状がみられます。冬に心配な点は、重度の低体温になり、生命のリスクが高まってしまう点です。
治療は、甲状腺ホルモン薬の投与です。しかし、重症の場合は、ホルモン薬が安定して効果が出るまでの間に時間がかかるケースがあります。中高齢の犬で、甲状腺ホルモンの異常が疑われる場合は、健康診断などの際、追加で甲状腺ホルモン値を測定した方がいいですね。
2つ目の病気は、猫の尿石症による尿路閉塞です。さまざまな年齢で見られ、一般的にはオスに多いとされています。狭い尿道に結石が詰まり、尿が全く出せなくなってしまう病気です。1日程度でも、重度の尿毒症に陥り、生命の危険があります。症状は血尿の他、何度もトイレに出入りする、何度も排泄(はいせつ)のポーズをとる、排尿していない―などです。
結石を溶解させるため、特別な療法食を必要とすることもあります。通常の治療は、尿道カテーテルを挿入し、尿道に詰まった結石を膀胱(ぼうこう)に戻して排尿させます。尿毒症とは、腎臓から出た不要な成分である尿素窒素などの毒素が体内に貯留してしまっている状態です。その場合は入院し、点滴治療をします。
(産経新聞 平成29年11月10日付)