ペットと暮らす獣医師からのアドバイス(57)
ペットの予防医療
毎週金曜日に産経新聞の生活面に掲載される、Team HOPE獣医師のリレーコラム、第57回目が掲載されました。
Team HOPE九州地区、大津動物病院院長 藤本晋輔 がお伝えします。
動物病院は、一般的には「犬や猫が病気になったら治療をして治すところ」というイメージがあります。しかし、動物が元気に行動しているからといって、体が健康であるとは限りません。また、飼い主は健康だと思っていても、健康診断を受けたら病気の一歩手前だったということもあります。治療だけでなく食事習慣の改善や病気の防止も獣医療の役割なのです。そういった医療のことを予防医療と呼んでいます。
予防医療は幅が広く、病気の予防だけにとどまりません。感染予防の混合ワクチン接種やフィラリア、ノミ・ダニ駆除による病気の予防のほか、検診などによる病気の早期発見、すでに病気を抱えている動物の悪化を防止したり、病気の再発防止も含んでいます。
ペットの予防医療の必要性が高まっている理由として、以下のことが考えられます。
1つ目はペットの高齢化です。症状が出たときには、すでに手遅れだった―などとならないように、日頃から飼い主さんがペットの健康を意識することが重要です。
2つ目はペットロスに悩む飼い主の増加です。ペットが急死し、十分な治療を受けさせることができなかった場合、「もっと何かできることがあったのではないか」と悔やみ、ペットロスの症状が重くなることがあるからです。
最後に、ペットの健康寿命を延ばすことも予防医療の重要な役割です。ペットが介護を必要とする病気にかかると、飼い主さんのストレスも大きくなるため、そのような予防も必要なのです。
大事なことは、予防医療は年齢や健康状態にかかわらず、動物病院任せでは効果は薄いということです。ペットの健康は、飼い主さんが主体となって守ってください。
(産経新聞 平成29年10月27日付)