ペットと暮らす獣医師からのアドバイス(56)
高齢化と向き合う

毎週金曜日に産経新聞の生活面に掲載される、Team HOPE獣医師のリレーコラム、第56回目が掲載されました。  
Team HOPE九州地区、江口動物病院院長 江口邦昭 がお伝えします。 

東京農工大の調査によると平成2年に、犬8.6歳、猫5.1歳であった平均寿命が26年には犬13.2歳、猫11.9歳になったとのことです。25年間に平均寿命は犬で1.5倍、猫では2.3倍に伸びました。獣医療の発達、室内飼育の増加、ペットフードの質の向上などが影響していると考えられています。

 一方、高齢化ゆえの身体機能の衰えなどが現れてきます。耳が遠くなった▷段差を跳び越えられなくなった▷床に置いたフードをすぐに見つけられない▷歩く速度が遅くなった▷排尿排便に時間がかかる▷猫が爪研ぎをしなくなってきた―などの変化はありませんか? 加齢が原因の場合もありますが、何らかの病気のサインのこともありますので、まずはかかりつけの動物病院で相談してください。

 犬や猫も高齢になると、程度の差はありますが、何らかの介護が必要になってきます。例えば、家の中の段差を無くしたり、食事を食べやすい形状にしたりといった配慮も必要でしょう。また、おむつを使用したり、こまめに爪切りやシャンプーをしたり、投薬や排便排尿の補助が必要になったりと、若くて元気なころに比べると手がかかることが増えてきます。

 飼う側の負担は大きいかもしれませんが、それをつらいと思ってペットに接すると、ペットも敏感にその気持ちを感じ取ります。介護が必要になったということは、それだけ、楽しく幸せな時間を長く共有できたという証しです。ペットが高齢になっても安心して生活できるよう、笑顔を忘れず、悔いのないよう、楽しく幸せな気持ちでケアしてください。その気持ちがペットに伝われば高齢の飼い主さんも、お互いハッピーで楽しい老後生活が過ごせると思います。

 

 (産経新聞 平成29年10月20日付)