ペットと暮らす獣医師からのアドバイス(38)
ひげで分かる猫の気持ち
毎週金曜日に産経新聞の生活面に掲載される、Team HOPE獣医師のリレーコラム、第38回目が掲載されました。
Team HOPE関東地区 関内動物クリニック 小澤真希子 同クリニック顧問 牛草貴博 がお伝えします。
猫の鼻の横や目の上には長いひげが生えています。人のひげは口周りに生える毛のことを指しますが、猫をはじめ動物のひげは単なる毛ではありません。
動物のひげは洞毛(どうもう)、あるいは血洞毛(けつどうもう)といい、根元にたくさんの神経が集まっています。このため、ひげの先に何かが触れる、周囲の空気が動いてひげが揺れるなどすると鋭敏に感知することができます。動物のひげは眼や耳と同様に感覚器なのです。
猫のひげをよく観察すると、状況によって向きを変えていることが分かります。このひげの向きから猫の気持ちを読み取ることができます。
猫のひげが真横を向いて自然なアーチを描いているときは、リラックスしているときです。また目の前に何かあったとしても、特に興味を感じていない状態です。
一方、目の前の物に興味をもっているとき、興奮しているとき、緊張しているときは、ひげを広げるようにしてやや前方に向けます。例えば、何かを追いかけて遊んでいるときはこのようなひげの形になっています。目の前のものを感知しようとして、アンテナのようにひげを大きく張っているのです。
相手を攻撃しようとしているときなど、興奮が非常に高い状態になると、ひげはよりピンと前方に立てられ、同時に身体の毛も逆立ちます。
逆に恐怖でおびえているときは、ひげが鼻の脇に貼り付いた状態になります。このようなときは耳も頭に貼り付くように下げられます。
猫は顔の表情が少ないためクールな印象がありますが、実はひげに表情がある動物なのです。ひげの観察で、猫の新たな一面が見えてくるかもしれません。
(産経新聞 平成29年6月9日付)