ペットと暮らす獣医師からのアドバイス(3)
秋の味覚、ブドウに注意

毎週金曜日に産経新聞の生活面に掲載される、Team HOPE獣医師のリレーコラム、第3回目が掲載されました。
Team HOPE北海道地区委員長、まえたに動物病院院長 前谷茂樹がお伝えします。

 暑かった夏も終わり、過ごしやすい季節になってきましたね。秋といえば、やはり「食欲」。気温が下がり過ごしやすくなることで、夏バテ気味だった体調も良くなり、ペットの食欲もわいてきます。実りの秋、というように、おいしい食べ物が出回る時期なので、人もつい食べ過ぎてしまいますね。

 ただ、秋の味覚の中で、ペットに与えると危険なものがあります。それは「ブドウ」です。人はブドウをたくさん食べても何も害はありませんが、犬の場合には、死に至る中毒を起こすケースが報告されています。

 犬の中毒としては、ネギ中毒が有名ですが、ブドウ中毒はあまり知られていません。知らずにブドウを与えている飼い主もいるようです。

 ブドウ中毒の症状は、食後72時間以内に吐き気や下痢があり、食欲不振、腹痛、脱水などの症状も起こります。数日後には、腎不全となって長期間の治療が必要になったり、死んでしまったりする場合もあります。

 中毒の原因物質は分かっていません。生のブドウのほか、干しブドウも危険です。致死量は、生のブドウは体重1㌔当たり30㌘以上、干しブドウは同10~30㌘といわれています。

 私も、ブドウを一房食べて腎不全を起こした体重10㌔のシェルティーを診察したことがあります。重度の腎不全になってしまうと治療が難しく、残念ながら死んでしまいました。

 いくらおねだりされても、犬にブドウは絶対に与えないでください。このことは、犬を飼っている方に広めていただきたいと思います。

(産経新聞 平成28年9月16日付)