ペットと暮らす獣医師からのアドバイス(24)
フィラリア予防
毎週金曜日に産経新聞の生活面に掲載される、Team HOPE獣医師のリレーコラム、第24回目が掲載されました。
Team HOPE中四国地区委員、だて動物病院 伊達成寿がお伝えします。
フィラリア症は、犬にとって命に関わるとても危険な病気です。
蚊を媒介に感染が広がる寄生虫病で、感染した犬の体内でフィラリアは成長を続け、肺動脈や心臓に寄生します。このため、散歩中に疲れやすくなったり、乾いたせきをするようになったりします。
成長したフィラリアは糸状で、長さが10~30㌢にもなります。多数の成虫が寄生すると、心臓につながる血管を塞ぎ、呼吸困難などを伴う急性症状が出て、最悪の場合、死亡するケースもあります。さらに、発症例は少ないものの、人間にうつるリスクもあります。
恐ろしい病気ではありますが、予防薬の適切な投与によりほぼ完全に防ぐことができます。蚊が飛び始める1カ月前から、蚊がいなくなった後の1カ月の期間、月に1度予防薬を投与します。飲み薬を嫌がる犬のために、滴下剤や注射タイプもあります。
診療を行っていると、昔に比べ最近は、飼い主の予防の意識が高まり、フィラリア症自体は減少傾向にあると感じています。しかし残念ながら、予防を怠ったためにフィラリア症を発症してしまう犬が年間に数十頭来院しているのも事実です。中には、治療のかいなく死んでしまうケースもあります。「しっかりと予防さえできていれば、命を落とさずに済んだのに…」と悔しい思いをすることもあります。
愛犬をフィラリアから守るため、正しい知識を持って、継続的に予防に取り組んでください。重要なことは、それぞれの犬に合った予防薬の選択と、適切な投与期間です。かかりつけの獣医師と相談してみてください。
(産経新聞 平成29年2月24日付)