ペットと暮らす獣医師からのアドバイス(23)
ノミ・マダニ対策の落とし穴
毎週金曜日に産経新聞の生活面に掲載される、Team HOPE獣医師のリレーコラム、第23回目が掲載されました。
Team HOPE中四国地区委員、若葉会動物病院院長 標葉譲がお伝えします。
近年、ペットを大切な家族の一員としている方にとって、月に1度のノミ・マダニ予防薬の使用は広く認知されてきています。私も診察をしていると、「何月から何月まで予防すればいいですか?」といった質問をよく受けるようになりました。そんなときは「一年中した方が安心ですよ」とお答えしています。
ノミの感染ピークは梅雨の時期から夏にかけてですが、冬でも室内の温度が13度を超えていればノミは十分に活動できます。そのため、予防をしないでいいと思われがちな冬の間にノミの大量発生が起こる可能性もあるのです。ノミに感染すると、貧血・消化管内寄生虫・ノミアレルギーなどの症状が続発し、子猫などでは死に至るケースもあります。
一方、マダニの感染ピークは梅雨時と秋の2回です。マダニも一年中生息しているため、ピーク時だけの予防では不十分です。マダニに感染した場合は、ノミのケースよりもさらに深刻です。
動物では、重篤な貧血を引き起こすバベシア症・猫ヘモバルトネラ症の感染を媒介し、人ではライム病・日本紅斑熱・SFTS(重症熱性血小板減少症候群)を媒介します。
万が一、動物にマダニが寄生していても、感染症のリスクがあるので素手で触らないように注意してください。獣医さんに駆虫薬を処方してもらい、適切に使用すれば死んだマダニは自然に落下します。
つらいとき、くじけそうなときに私たちを癒やしてくれる動物たち。その命を守り、平安な日常を送らせるために、できることを無理のない範囲でしてあげてほしいと切に願います。
(産経新聞 平成29年2月17日付)