ペットと暮らす獣医師からのアドバイス(20)
狂犬病予防について
毎週金曜日に産経新聞の生活面に掲載される、Team HOPE獣医師のリレーコラム、第20回目が掲載されました。
Team HOPE中四国地区委員、やさか動物病院長 大石太郎がお伝えします。
狂犬病という感染症を知っている方は、どれくらいいるでしょうか? 国内で狂犬病の感染が最後に確認されたのは、もう60年近くも前のことになります。
狂犬病予防法で生後90日を超えたすべての犬は登録と予防接種が義務付けられています。当時は、まだ狂犬病の怖さが知られていたためか、ワクチン接種率は99%でした。しかし、現在では71.6%にまで下がっています。登録されていない犬がいることも考えると、全体の接種率は半数にも満たないといわれています。
なぜ、これだけ接種率が低下してしまったのでしょうか。それは、60年近く感染例がないことで、狂犬病自体が身近な感染症でなくなり、危機意識が薄れているためです。確かに日本では、飼っている犬が狂犬病に感染するリスクはかなり低くなりました。しかし、海外から持ち込まれるなどした場合、現状の接種率では感染拡大を防ぐことができないことに危機感を感じています。
狂犬病は、犬から犬はもちろん、人をはじめすべての哺乳類に感染するといわれ、発症後の致死率は100%と非常にリスクの高い病気です。アジアでは今も多くの国で年間数万人の死亡者が出ているのです。
この恐ろしい感染症を日本で二度と発生させないためには、飼い主の皆さんが責任を持って予防接種を受けさせることが重要です。ワクチンは、家族の一員である犬を病気から守るだけでなく、狂犬病から日本を守る大事な予防線でもあるのです。
ただ、狂犬病の予防接種には、少なからず副作用があるのも事実です。接種する際には、必ずかかりつけの獣医師に相談しましょう。年1回の接種を目標にしてほしいと思います。
(産経新聞 平成29年1月27日付)