ペットと暮らす獣医師からのアドバイス(2)
熱中症にご注意
毎週金曜日に産経新聞の生活面に掲載される、Team HOPE獣医師のリレーコラム、第2回目が掲載されました。
Team HOPE北海道地区委員長、まえたに動物病院院長 前谷茂樹がお伝えします。
9月に入っても、まだ暑い日が続いています。暑さで体調などを崩されていませんか? 今回は、ペットの熱中症についてお話ししたいと思います。
ある夏の日の午後、フレンチブルドッグが呼吸困難で動物病院に運び込まれてきました。呼吸はゼーゼーと荒く、舌は紫色。体温は42度で、意識がもうろうとしています。飼い主によると、昼間に散歩に行ってから、具合が悪くなったとのことでした。
診察の結果、「熱中症」だったことが分かりました。もともと犬は人よりも体温調節が苦手。このため、発症例は多いのですが、このフレンチブルドッグはかなり危険な状態でした。酸素吸入や点滴、冷水で体を冷やすなどの処置をし、夜には症状が落ち着きましたが、あと1時間遅ければ死んでいたでしょう。人は、汗をかくことで体内の熱を放出し、体温を下げることができますが、犬は足の裏にしか汗腺がないため、呼吸でしか熱を放出することができません。体温が急上昇しやすい環境では、体温調整が間に合わずに熱中症になりやすいのです。
中でも、ブルドッグやパグなどの鼻の長さが短い「短頭種」は呼吸がしづらいため、体温を下げにくい特徴があります。特に注意が必要なのです。
熱中症の原因は、ほとんどが「飼い主の油断」によるものです。飼い主のちょっとした気の緩みから、大切なペットを失った例をたくさん見てきました。散歩は気温の高い時間帯を避けたり体が熱を持っていると感じたら水を飲ませたり、しっかりと熱中症対策をとって、暑さを乗り切りましょう。
(産経新聞 平成28年9月9日付)