ペットと暮らす獣医師からのアドバイス(16)
寒さに弱い犬

毎週金曜日に産経新聞の生活面に掲載される、Team HOPE獣医師のリレーコラム、第16回目が掲載されました。
Team HOPE北海道地区委員長、まえたに動物病院院長 前谷茂樹がお伝えします。

 本格的な冬。犬は寒さに強いというイメージをお持ちの方が多いと思います。私の住む北海道でも、室外で飼育されている犬が多く、真冬に雪の中で丸くなって寝ている姿がよく見られます。寝ている犬の背中に、雪が積もっていることもあります。
 ただ、そんな寒さ知らずの犬でも、年を取ってくると、急に寒さに弱くなってしまうことがあります。そんなときは、甲状腺から分泌されるホルモンが不足してしまう「甲状腺機能低下症」を発症している場合があります。
 甲状腺は、首の気管の両脇にあり、甲状腺ホルモンを分泌しています。甲状腺ホルモンは全身の代謝に関わるため、不足すると体温の低下▷胴体の左右対称性脱毛▷体のむくみ▷心拍数の低下―といった症状が出ます。ただ、こうした甲状腺機能低下症の症状が加齢による症状と似ているため、発症していても気がつかず、加齢のせいだと思い込んでいる飼い主が多いのです。
 甲状腺機能低下症の診断は、血液検査で行います。治療は、甲状腺ホルモン剤の投薬が一般的です。犬の病気としては比較的多くみられるので、チームホープでは、8歳以上になると甲状腺ホルモンの値の検査を推奨しています。
 年齢が8歳以上になったり、寒い日の散歩で震えて帰りたがったりしたら、この病気である可能性があります。
 気になったら早めに、動物病院で調べてもらうといいでしょう。

(産経新聞 平成28年12月16日付)