ペットと暮らす獣医師からのアドバイス(10)
飼う前に知ってほしいこと

毎週金曜日に産経新聞の生活面に掲載される、Team HOPE獣医師のリレーコラム、第10回目が掲載されました。
Team HOPE東北地区委員、Dog&Cat Hospital GALFAR 小泉信輝がお伝えします。

 ペットを飼うと、かけがえのない経験や時間が得られますが、飼い始めるときにはよく考えていただきたいことがあります。
 飼い主の皆さんの声を聞くと、犬や猫などペットと暮らすことで、子供の心が豊かになったり、命の大切さを理解できるようになったりするようです。ペットを通じて家族とのコミュニケーションも増えるので、家庭も明るくなることでしょう。高齢者の場合は、ペットとの触れ合いで情緒が安定したり、犬の散歩によって運動不足が解消できたりとさまざまなメリットがあるようです。積極的に外部とのコミュニケーションをとるきっかけにもなるでしょう。さまざまな年齢、立場の人にとって、ペットとの暮らしは多くの利点を感じさせてくれると思います。
 ただし、誰でもペットが飼えるわけではありません。当然、ペットを禁じている集合住宅では無理ですし、仕事が忙しいなどの理由で十分世話ができない場合は、ペットも飼い主も不幸になってしまいます。
 また、ペットを飼う前には、「命あるものには必ず別れがある」ということを理解しておかなければなりません。ペットが死んだときの大きな喪失感を表す「ペットロス」という言葉がよく聞かれるようになりました。悲しみのあまり日常生活に支障を来す人もいるそうです。睡眠がとれなかったり食事がとれずに体調を崩したりして、会社に行けなくなったという話も聞きます。
 一度、犬や猫を飼ったら、家族と同じように多くの時間を共有することになります。最後まできちんと飼い続けることができるのか、十分に検討した上で決めていただきたいと思います。

(産経新聞 平成28年11月4日付)